東京医科大学八王子医療センター 脳神経外科 | 脳神経外科最前線

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 脳の血管が何らかの原因によって詰まり、血流が阻害される脳梗塞。脳梗塞を発症すると酸素が行き届かなくなり脳の組織が壊死してしまうため、可及的速やかな治療が必要です。脳梗塞発症から4時間半以内であればt-PA(血栓溶解剤)療法の静脈点滴が適応されます。しかしながら、t-PA療法は時間的制約が極めて短いため、発症後に時間が経っている場合はt-PA治療を行うことができません。こうした場合に有効な治療が、カテーテルを用いた血管内治療です。血管内治療は、脳梗塞発症8時間以内であれば血栓回収を行い血流の再開通が可能であることから、ここ近年は、脳梗塞治療におけるメインストリームとなっており、さらに今後は治療適応の時間が8時間から延長される見込みがあります。
カテーテル血管内治療で得られるメリットは、一般的な外科手術(開頭手術)よりも短時間で治療が行えることと、低侵襲(身体の表面にカテーテルを通すために、わずか5ミリの切り傷だけで治療が可能)であることの2つ。これらによって、患者さんのストレスを大幅に軽減させることが可能になります。とくに外科的な手術に耐えられないような病気を持たれている方、たとえば心臓に持病を抱えていたり、呼吸器機能が悪いという方にとっては“やさしい治療”ということができます。それらのメリットを考えると、今後はますますカテーテル血管内治療の選択が増えていくものと考えられます。
救急医療の現場視点で考えると、脳卒中(脳梗塞、くも膜下出血)は時間との勝負というところもあるため地域における救急医療体制が重要になります。現在すでに、循環器系の心筋梗塞に関しては、地域医療との連携が整っていますが、脳卒中に関してはそうした整備の構築段階です。医療連携の仕組みが整備されれば、急性期の脳梗塞におけるカテーテル血管内治療の成功率はより向上することは間違いありません。

担当:救命救急センター 弦切純也(日本脳神経血管内治療学会指導医、日本脳神経外科学会専門医、日本救急医学会専門医)